通信制の恋
「な、直?」


「…今日一日手繋いでどうだった?」


「う、嬉しかった。ずっと直がそばにいるって実感できた。」


「うん、そう。俺は結のそばにずっといるから。今日はちゃんと牽制したけど、学校で何かあったら、直ぐに俺に言うんだよ?分かった?」


「うん、分かった。」


私がそう頷くと直はそっと私を抱き締めていた腕を緩めた。


そして、少し屈んで、私の唇に口付けた。


「!!」


「じゃあね、結。」


そのまま何事もなかったかのように帰っていった直に私は玄関に入った途端、腰を抜かして座り込んでしまった。


「あら、やっぱり帰ってきてたのね、どうしたの、玄関に座り込んで」


「な、なんでもない!」


私が玄関の戸を閉める音で帰ってきたことが分かったのか、母さんがキッチンのあるダイニングから顔を覗かせた。


「そう?あ、お弁当出してね。洗うから。」


「はーい」


と、呑気に返事をしたものの、私は未だに腰を抜かして全然力が入らず、立てなかった。


「(それもこれもみんな直のせいだ!!!)」



お風呂あがりに直に抗議のメッセージを送ったのは言うまでもない。

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