通信制の恋
体育の時間が迫り、体育教師がスマホの回収を始めた。


私はそれに準じ、小さな段ボール箱の中にスマホをいれた。


体育が終わったら、返事が来てますようにと、願いを込めながら。





「「「ありがとうございましたー」」」


5,6限の体育の授業が終了した。


私と杏樹ちゃんはすぐさまスマホのある段ボール箱からスマホを取り出してメッセージを確認する。


が。


「ダメ。やっぱり来てない。」


「ダメか〜…、次バイト重なるのはいつ?」


「明日。」


「じゃあ、早速明日聞いてみたらいいよ!」


「うん。そうする。」


杏樹ちゃんと二人で更衣室に戻り、着替えると、久々に1人で帰路についた。


なんだか、1人で帰るのは久々で今までずっと直が一緒に帰っていてくれたから、寂しくはなかった。


直がいないだけで、心が空っぽになったかのような喪失感を味わうことになろうとは…


「(よっぽと、直に依存してるんだろうな…)」



そんなことを思っていると、いつのまにか家に着いていた。


「ただいま〜」


「お帰り〜。」


リビングから母さんの声がして、そちらに行くと、ソファーに寝転がり、TVを見ている母がいた。


「今日も天野くんに送ってもらったの?」


「なに、急に…。今日は直、学校来てなくて1人で帰ってきた。」


「あら、そうなの?今まで天野くんが送ってくれてたから心配せずに娘を預けてたのに…。どうしたのかしら?」


「それが私も学校の友達も分からなくて…。明日バイトに行ったら聞いてみる。」


「バイトには出てるんでしょう?」


「うん。バイトでは直に会ってたよ?」


「それなら聞けるわね。しっかり聞いといてね。」


「はいはい。私着替えてくるから、ご飯作ろ。」


「はいよー。」


ソファーに寝転びながら返事をする母さんに苦笑いしつつも、私はリュックを置きに部屋へと戻った。


その時もメッセージを確認したが、既読もつかず返事もなかった。
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