通信制の恋
人混みを掻き分けて、直に近付こうとした瞬間、私の足は止まった。


直の隣に誰かいたのだ。


しかも親しげに腕を絡めて。


それは可愛い女の子で、私よりも少し年上くらいかと思う人だった。



「(どうして…どうして…?直…)」



私は呆然と立ち尽くしていると直が私に気付いたようだった。



「結…?」


「直…」


直は私を見つけると、腕を組んでいた女の子の腕を振り解き、私に近付いてきた。


「結、これは違うんだ。向こうから勝手に…」


「直、バイトまで休んで女の子と一緒にいたの?」


「それは…」


「もう、いい。私帰る。」


「結!送る。」


「来ないで!その女の子と仲良くしてればいいじゃん!」


私を引き止めようと手を伸ばしてきた直の手をパシッと叩き払って、私は走り出した。



駅前の人の多さに直もすぐには追ってこなかった。


手を振りほどいたのは私だが、それでも追ってこなかったことに私は更に悲しかった。





そのまま走って駅前から離れると、ハァハァと荒くなってしまった息を整えた。


「はぁー…、逃げてきちゃった…」


あの女の子との関係性を聞けなかったことは彼女として失格だったのだろうか。

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