通信制の恋
中庭へは1階のロビーまで行き、そこから中庭へ出入りできる入口があった。


「わぁ…、凄い綺麗…。」


「夜の散歩も悪くないでしょ?」


「うん。昼間とはまた違ってライトアップされてて、綺麗…」


私は木々がライトアップされた小道をゆっくりと歩いた。


「ちょっと金木犀の匂いもするかも。」


「そうだね、時期だもんね。」


直の言葉に私もスンスンと鼻を効かせて嗅いでみると、僅かだが金木犀の香りがした。


「結」


「ん?」


急に名前を呼ばれて振り返ると、直が手を握ってぐいっと近付けた。


"ちゅっ"とリップ音を立ててキスされた私はボンッと顔を赤くした。


「な、ななな直?こんなとこで、ど、どどどどうしたの?」


「…俺、結構我慢してるんだけど。」


「我慢?」


「温泉から上がってから、結の色気が凄くて俺、ずっと我慢してる。」


「そ、そうですか…」


「だから、少しいい?」


「ん…、ど、どうぞ」


少し両手を広げて受け止める準備をすると、直はそっと私を抱き締めた。


「ん、ここじゃ、これが限界だから、部屋戻ろうか」


「う、うん…」


ひとしきり抱き締めて私の首元の匂いを嗅いだかと思ったら、直は私の手を引いて、部屋へと戻った。



部屋に戻るといつのまにか、机はどかされ、布団が2つ並べてあった。


「この時間を取るために散歩に行こうって誘ったの?」


「さぁ、どうでしょう」


しらばっくれるつもりの直はそれ以上は教えてくれなかった。
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