通信制の恋
「2人って同じバイト先なんだっけ?」


「うん、そう。私の家の最寄駅の近くのカフェ。」


「カフェか〜、いいな〜、オシャレ?」


「うん。めっちゃオシャレだし、珈琲とかデザートが美味しいの。」


「今度私も行ってみようかな…?」


「おいでおいで!きっとまきさんが最高の珈琲を出してくれるよ!」


「その"まきさん"ってのは、どなた?」


「あっ、店長さんだよ。みんな、まきさんって呼んでるんだ。」


「へぇ〜、バイトの雰囲気も良さそうだね。」


「うん、今じゃだいぶ仕事が慣れてきて、楽しいよ。」


「私もバイトしなきゃな〜」


そう言って杏樹ちゃんはぐでーんと机に突っ伏した。


そこで始業のチャイムが鳴り、担当教科の先生が入ってきて授業が始まった。






お昼休み。


私と杏樹ちゃんは午後の授業が行われる教室で向かい合ってご飯を食べていた。


直は私が作ってきたお弁当を無言で食べていた。


「天野くん、もっと"美味しい"とか"うまい"とか"また作って欲しい"とかそういうの無いの?」


と杏樹ちゃんが直に尋ねると、直は手を止め咀嚼しごくんと飲み込むと一言。


「美味い」


と言って、再び無言でご飯を食べ始めた。


「結ー!本当にアレでいいの!?」


「いいのいいの。無言で食べてるってことは美味しいって証拠だから。」


「熟年の夫婦みたいな感じね…あんたら…」


「杏樹ちゃんはどうなの?東雲くんとは。」


「ん?太陽?ちゃんと私の作った料理は美味しいって言って食べてくれるよ」


杏樹ちゃんも卵焼きを口にしながら答えてくれた。
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