通信制の恋
「直…、来なくても大丈夫って言ったでしょ?」


「結と離れてる方が無理。だから、来た。俺も手伝う。」


なんだか、言葉を覚えたての動物のような感じで喋る直に、クスクス笑っていると、直がキッチンへと入ってきた。


「何笑ってるの」


「ふふ、なんかカタコトだったから」


直は私の後ろに立つとそっと抱き締めてきた。


「どうしたの、直」


私もそっと体の前に回された直の手をゆっくりとさすった。



「バイトで会ってるとはいえ、離れてるの寂しくなってきた。まえまで1人なの慣れてたのにさ。今では毎日結が恋しいよ。」


「直…。私も直と会いたかったよ。バイトとプライベートだと違うもん。」


「…2人きりだからいいよね。」


「へ?」


そういうと直は後ろから首筋に口付けたり、耳に口付けたりしてきた。


「な、直!」


「静かに。上にあいつらいるんだから。」


「うぅ…。」


出そうになる声を必死に我慢しながら、私は直からの口付けの雨を受けた。


最後には私をくるっと回転させて、直の正面に向かせると、唇に口付けた。



「結の補給終わり。」


そう言って直はぺろりも唇を舐めた。


そんな仕草にも、私は今さっきまで直が口付けていた場所を触り、ボンッと顔を真っ赤にした。



「ほら、お湯湧いてるよ。飲み物準備しなくていいの?」


「誰のせいだと思ってるの!」


「俺。」


「分かってるんじゃない!」


そんなやり取りをしていると玄関がガチャリと開く音がした。


「ただいま〜。」


「あ、お母さんおかえり。」


「あら、結、休憩?」


「そう。」


「じゃあ、この間親戚から頂いたクッキーがあるからみんなで、食べなさい。」


「いいの?じゃあ、貰う。」


私は沸騰したお湯を人数分のマグカップに注ぎ、容器を温めている間にそのクッキーを見つけ、皿に盛った。


温まったマグカップのお湯を捨てて、そこに紅茶のティーパックを入れてお湯を注いだ。

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