通信制の恋
私は直が帰り支度が終わるまで入り口近くの席に座って直を待った。



数分もすればスタッフルームから直が出てきた。


「直!」


パァと自分でもあからさまだと思うが、顔が綻ぶのを抑えきれず、直の元へと向かった。



「なんで、いんの。」


「え?ちょ、ちょっとお買い物に…」


「友達の彼氏連れてどこに買い物に行ってたの。」


「え…、東雲くんは途中でこの店に行っちゃったし、それに、杏樹ちゃんも一緒だったよ?」



「彼氏が見ていたのに、堂々と浮気?」


「ち、ちが…」


「今日はもう帰りなよ。俺寄るとこあるから。じゃ。」


「な、直!」


バタン!



直は何かを勘違いしたまま、お店を出て行ってしまった。



「結…。」


「あ…、杏樹ちゃん…。」


「天野くんどうしたの?」


「それが…、私と東雲くんが歩いているとこ、見てたみたいで、"堂々と浮気?"って言われて…」


「あちゃー…、私がいたこと見えてなかったのかもね…、人多かったし…。今すぐ追いかけたら?」


「人混みが多くてもう分からないよ…」


「結…」


「ごめん、私ももう帰るね…」


私は直に勘違いをさせて、ひとりぼっちのまま帰路に着いた。


一人で帰るのはもういつぶりだろうか。


それだけ、直と一緒に帰るのが当たり前になっていた。



それから帰宅して、お風呂に入り、ご飯も食べたあと、夜になってから直に電話を掛けたが繋がらず、メッセージを送っても返事が返ってくることはなかった。


そのまま次の日はバイトが重なるから、と思い私は布団をかぶって、眠りについた。
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