通信制の恋
メモのやり取りは1ヶ月ほど続いた。


入学してからだいぶ経ち、学校生活にも慣れてきた頃。


学校で天野くんと同じ授業に出れば、必ずメモのやり取りをするようになった。


そこでわかったことがある。


天野くんは甘いものが好きだ。

苦いものが苦手。

意外とお化け屋敷とかが苦手、
でも、ミステリーやオカルトめいたものは
少し興味があるらしい。

そして、バイトをしているらしい。

この学校に入ったのもバイトと両立できる学校だったから選んだらしい。


バイトをしてる理由も教えてくれた。


バイトしてるのはゲームをするためだって。

そうメモに書かれていた時には、吹き出しそうになった。


「(ゲームのためって…、小学生みたい…)」


クスクスと微笑みながらやり取りしたのは最近のことだった。





私のことについても質問攻めにされ、私はどれも素直に答えた。


この学校を選んだこと、好きなこと、苦手なこと、何でも話した。


話してるうちに天野くんへの気持ちがだんだんとはっきりしてきた気がした。


だが、そこで私はメモのやり取りをするようになって自惚れていたのかもしれない。





いつものように授業中のメモのやり取りも終え、授業が終わって解散した後、お昼休みになった。


私と杏樹ちゃんが1つの机にお弁当箱を広げてご飯を食べようとしてるとき、教室に美人が訪ねてきた。



「あの、天野直くん、いますか?」


その美人は今年入学した私たちと同じ学年の白鷺彩乃(しらさぎ あやの)さんだった。


美人の訪問で、しかも指名となれば教室はざわめいた。


お弁当を頬張る私たちの隣で今正に席を立とうとした天野くんに視線が一気に集中した。


「……今行く。」



短く返事をすると、天野くんは白鷺さんとどこかへ行ってしまった。
< 26 / 167 >

この作品をシェア

pagetop