通信制の恋
私の歩調に合わせて歩いてくれる天野くんにきゅんとしつつも私はどうして一緒に帰ることになったのか疑問に思った。


「あ、天野くん、どうして今日は一緒に…?」


「最近さ、俺のこと避けてただろ」


「う"っ……」


図星だった。
白鷺さんのことがあったため、私はあからさまに天野くんを避けるようにしていた。


あと、自分に自信が持てずに、天野くんの隣にいることがいけないことだと思った



「俺は、結に隣にいて貰った方が楽しいんだけど」


「あ、な、名前…」


私のことを名前で呼んでくれたことに顔に熱が集まるのを感じた。


「結、でしょ?」


「そ、そうですけど…。」


「結って呼んじゃダメ?」


「う…、ダメじゃ、ない、です」

立ち止まって私の方をしたから覗き込むように見つめてくる彼は確信犯なのかもしれない。

私が言い淀むのを見ると満足げに微笑み再び歩き始めた。


私はその微笑みに胸を打たれ、大人しく天野くんに手を引かれることとなった。




学校の最寄駅に着いても天野くんの手が離れることはなく、ずっと握ったまま私が帰る電車が来るホームで並んで立っていた。


「あの、天野くん、もう電車来ちゃうよ?」


「…結が乗るまで見届ける」


「そ、そこまでしなくても…。」


「てか、その"天野くん"ってやめない?"直"でいいよ」


「そんな!恐れ多い!」


「恐れ多いって…っ、俺の名前くらい呼んでよ」


「う"……」


私の表現が天野くん…いや、直のツボを刺激したのか直はクスクスと笑った。
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