通信制の恋
「行くよ。結の家はどこ?」


「えっと、こ、こっち…」


私は繋がれた手をくいっと右に持ってきて直をリードした。


ざわつく女の子たちの視線がとてつもなく痛いが、そんな視線から逃げるように私は直を連れ出した。


ある程度駅から離れると私は直の手を離そうとした。


しかし、緩めようとした手を直はまた強く握り返した。


「あの、直…手はもういいんじゃ…」


「結を離したくないの、ダメ?」


と私の顔を覗き込むように見つめてきた。


「っ!だ、ダメじゃないです…」


「なんで敬語になってるの」


ふふ、と軽く笑ったその直の笑顔に私はまたハートを撃ち抜かれた。





そんなこんなで、学校でノートの切れ端を使って話していたからか、話題が尽きることもなく、私の家へと辿り着いた。



「ただいま」


「お邪魔します」


「今、母親は買い物に出かけてるから、気にしなくていいよ」


「結、今爆弾発言したこと気付いてる?」


「へ…?」


「この家に俺と2人っきりってことでしょ?」


「〜〜っ!わ、忘れて!」


直の言う通り、自分の発言を思い返すととんでもないことを言ってしまった。


この前の電話で今回の勉強会を誘ったことといい、最近の私はなぜか大胆になってきてしまっていた。


「忘れるなんて勿体無いから、忘れない。」


「もう!私の部屋は階段を上がって直ぐ右手だから!お茶持ってくから待ってて!」


「俺も何か手伝おうか?」


「お客さんは大人しくしてて!」


さぁさぁ!と直の背中を押して階段を上らせると、私はキッチンで飲み物の準備をした。
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