通信制の恋
空が夕暮れに包まれて来た頃、直は体をよじらせ、むくりと起きた。


「あ、起きた?」


私は読んでいた本を閉じて直の方へ体を向けた。


「よく眠ってたね、テストで疲れた?」


「なんでいるの…」


「なんでって、直と帰りたかったから…」


「こんな時間まで待ってなくていいのに。」


「だって、起こすの悪いかと思って」


私がそう言うと直は机の横に掛けていた鞄を持って立ち上がった。


「ほら、帰るよ。送ってく。」


「うん!」


直が寝ている間に教室の点検に来た先生に、事情を説明して残らせてもらっていたので、帰る前に教務室へ寄って、帰ることを伝えた。


「気を付けて帰れよ〜」


「はい」


「行くよ。」


「待って待って」



私がぺこりとお辞儀をして教務室を後にすると、直はそそくさと階段を降りて行ってしまった。



駅までの帰り道でカフェに寄り、私は抹茶ラテを。直はカフェオレを頼んで2人で飲みながら駅を目指した。



「直は今日のテスト手応えはどう?」


「普通。」


「そ、そっか…」



テストは2日間に分けて実施されるため、次は木曜日に登校することになっている。



しーーーーん



2人が飲み物を吸う音だけが2人を包み込んだ。



特に話すことも無くなってしまったが、それでもなんだかこの黙っている時間も悪くないと思った。





その後、直は黙ったまま私が帰る電車に当たり前のように乗り込み、私の家の最寄駅で一緒に降りた。



家に着くと、そこにはすでに明かりが灯っていて、母親が帰ってきている証拠だった。


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