通信制の恋
トントン拍子で進んでしまったことに驚きを感じつつも、初めてのアルバイトで緊張が高まってきた結は3日後になるまで毎日夜に直に電話をかけていた。


バイトの時の服装だったり、シフトの時間だったり、細かな質問をした。




そしてついにバイト先に行く日。


私は少しだけ伸びた髪の毛をちょこんと縛り、黒のシャツにジーンズという姿で直が来るのを待っていた。



すると、



ピンポーン



「はーい!」


トタトタと玄関に行き、扉を開けるとそこには、私と同じように黒いシャツにジーンズ姿の直が立っていた。


「天野くん、今日は結をお願いね〜」


「お母さん、出てこなくていいって。」


「あら、挨拶しとかないといけないでしょ?」


「いいから、もう私出るから!」


「気を付けてね〜」


間延びした母親の声を背中に浴びつつ、私は直の手を取って、家を出た。


一緒に駅に向かうにつれて、私は緊張してきた。


高校の入学式もそうだったが、新しい環境に入る瞬間がいつも怖くて、苦しくなってしまうのだ。



「結、大丈夫?今日行けそう?」


「大丈夫…、直がいてくれるから。」


私が直の手をぎゅっと握って正面を向くと、直も手を握り返してくれた。


「可愛い。今すぐ抱き締めたい。」


「ここではダメ!」


「どこならいいの?」


「外はダメ!」


「えー」


ぶーぶーと文句を言う直に私はクスッと笑った。



すると、直が立ち止まった



「ここだよ。ここのカフェ。」


いつのまにか駅前に着いてて、直の指差す場所には小洒落たカフェがあった。

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