通信制の恋
知らない人に声をかけられた上、手を掴まれて逃げ出せない恐怖から私は目に涙を浮かばせて必死に抵抗した。


杏樹ちゃんとも引き剥がされ、どうしたらいいか分からなくなったとき、ふと、私の手を掴んでいたチャラ男の取り巻きの奴の手が離れた。


「いたたたた!!」


「な、なんだよ、お前ら…」


「お前こそなんだよ、俺の彼女に何しようとした」

チャラ男の取り巻きの腕を掴んでいたのは、なんとこの場にいるはずのない直だった。


腕を掴まれその痛さから声を上げる取り巻きに、チャラ男は明らかに動揺した。


「ちょっと声を掛けただけじゃねぇか!んなガチで怒ることねぇだろ!?」


「お前らみたいな奴が汚い手で結に触るな。散れ。」



地を這うような低い声でいつもの直とは違う感じがして私は思わず後ろから直のことを抱き締めた。


「う、うっせぇな!行くぞ、お前ら!」


直の剣幕に圧倒されて、チャラ男たちは逃げて行った。





「結、どうせ抱き締めるなら正面からがいいな。」


さっきとは打って変わって優しく、柔らかな声で私の手をさすった直は私の腕を解いた。


私は腕を解かれると、再び、今度は正面から直に抱き着いた。
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