通信制の恋

通信制高校というものは、家で解いたりするレポートの提出と、学校に来て授業を受けることで出席日数を稼ぐ両方をこなすことが大前提である。

規定の出席日数とレポートの提出で、前期の試験の資格を取得することができ、試験で赤点以上を取れば進級できるという仕組みである。


私は早速レポートを持って学校へと向かった。


今日は春の行事としては恒例の健康診断があった。

もちろん、健康診断の時間も総合的学習の一環として出席日数のカウントに入るのだ。


だから、態々1限から出ているのだ。


教室は時間割によって違っており、3階に登ってきた正面に黒板があり、そこに何限目の授業はどこの教室か把握できるようになっている。


私は今日は1-Aの教室で数学の授業に出ていた。


先生の話を聞きながら、教科書に目を通してレポートを書き進めていく。


その合間にちらりと私は一番後ろの席の窓側に座る彼を盗み見た。


私は一番後ろの廊下側の席に座っていたのだが、彼は教室に入るなり、直ぐに窓側の一番後ろの席を陣取り、眠ってしまっていた。


「(また寝てる…)」


寝てても授業に出てれば出席日数は貰えるので、いいのだが、先生からすればやはり問題児であり…。


「こらー、天野、寝るんなら別の部屋寝ろ〜」


とやんわりと叱っていた。


数学の授業は主にレポートの内容の解説でどうやれば解けるか、という説明が主な授業内容だった。



キーンコーンカーンコーン



「ん〜!終わった!」


1限の終了を告げるチャイムが鳴ったと同時に教卓の先生も解説をやめ、教室から去って行った。


50分授業で凝り固まった体を伸ばしてほぐしていると視界の隅で天野くんがもぞもぞと動いた。


私はガン見する訳にもいかず、視界の端をちらちらと見ながら、次の授業の準備をした。


ちなみに次の授業も同じ教室で行われるため、私の移動教室は無かった。

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