きみのための星になりたい。
「ああ、今日も疲れたあ。五回目とはいえ、やっぱり学校の後の勉強は疲れるね」
授業終わり、先生が出て行った後の教室で、あかりが両腕を天に突き上げ伸びをしながら言う。それは私も例外ではなく、溜まりきった疲れを吐き出すようにふうっと静かに息を吐いた。
「ははっ、確かにな。俺らも通い始めの頃はなかなかこの生活に慣れなかったよな。二時間座りっぱなしだし」
そんな私たちを見て、悠真くんが笑う。
「悠真たちもだったんだね。ずっとぶっ通しで座ってるから、腰も痛くなるし」
再びあかりが口を開き放った言葉に、私たちは同意するように大きく首を縦に振った。
……そうなのだ。学校の授業で五十分程度椅子に座っていることはあっても、百二十分続けて座り、勉強し続けることは今まで経験したことがなかったから、とてもお尻や腰が痛くなる。いつも腰を少し浮かせたりと、対処はしているけれど、それでもやっぱりきついものはきつい。でもまあ、これも慣れということか。
口を動かしながらも、机上に散らかった文房具や問題集をまとめ、帰宅の準備をし始めた私たち。
気付けば、私たち以外の生徒はそそくさと帰っていったのか誰もおらず、四人だけが取り残されたように教室にいる。
次の授業を受ける生徒たちも次第に来るだろうから、早いとこ教室を出よう。そう思い、私たちは片付けを急いでその数分後には教室を後にした。
季節は四月の下旬。日中は暖かく春らしい陽気で、やや暑いと感じることも増えてきたが、夜風はまだまだ涼やかだ。
空を見上げれば、たったひとつの丸い月と、その周囲に散らばるようにして無数の星が煌めいている。
「じゃあ、俺たちはこっちだから」
柊斗が駅を指差し、またねと言うように私とあかりに小さく手を振る。柊斗と悠真くんは最寄り駅から数駅を跨ぎこの塾へ通っているから、帰りはいつも電車だ。それとは反対に、私とあかりは徒歩で帰宅する。
ふたりとは、ここでお別れだ。
「うん、またね」
「悠真も柊斗くんも気をつけて帰るんだよ」
私とあかりは順番にそう口にすると、柊斗と同じように掌を相手に向け手を振った。
そして、背を向け歩き出そうと思ったまさにそのとき、何かを思い出したかのように、悠真くんが「ちょっと待って」と、少し大きな声で私たちを呼び止めた。
だから私は踏み出そうと思っていた足を引っ込め、くるりと悠真くんの方へ体の向きを戻す。
悠真くんは鼻を掻きながらニシシと笑っていて、全然話の読めなかった私は訳がわからず首を右にかしげた。
「ちょっと悠真、何よ?」
あかりも怪訝そうな表情で悠真くんを見つめる。