きみのための星になりたい。
第4章 たまらず告げた思いの先に



あかりを怒らせてしまったあの日から一週間。ここ最近は最高気温が三十度を超える日がほとんどで、外にいるだけでじわじわと汗が滲んでくる。

私はといえば、あかりと不必要に言葉を交わさない日々が続いている。毎日おはようなど、最低限の挨拶はするし、塾のある火曜日と金曜日には一緒に塾へ向かう。けれど、その間には以前のように笑い声も弾む会話もない。

それに、この一週間、あかりは私ではない他のクラスの子とお昼を共にしている。私とあかりのただならない様子から、クラスメイトは私とあかりの間に何かがあったことに気付いているのだろう。一人でお弁当を広げている私に『一緒にお昼食べる?』と声をかけてくれた子もいたが、私はその誘いを丁寧に断った。

……これは、今まであかりのことすら信じきれず、自分をひた隠して毎日を過ごしてきた私への罰だと思ったから。

「……はい、凪」

お昼を終えた、五限目の授業開始前。突然聞き慣れた声に名前を呼ばれ、机に座って教科書を出していた私はパッと顔を上げる。そこには、なんとも言えない複雑そうな表情のあかりが立っていた。

「……なに?」
「これ、先生が凪に渡しといてくれって」
「ああ、ありがとう」

そういうことか、と思いお礼を述べるも、あかりは表情を変えることなく、頷いただけ。お互いのことを意識しているのに、何もないかのように振舞ってしまう。この瞬間が居心地悪くて、今まで何度も謝ろうとした。……今日だって。

「……あかりっ」

今日こそ、……今日こそ、あかりに謝ろう。そう思って彼女の名前を呼ぶ。けれど、その後の言葉が喉の奥に引っかかってでてこない。

やっぱり私は、弱いなあ。あかりと仲直りがしたいと思っているのに、もう一度二人でゆっくり話をしたいと思っているのに。

もし、あかりが許してくれなかったら?もういいと、突き放されたら?

……一歩進んだその先の未来を見るのが怖くて、私は口を噤んだ。

「なに?」
「……ううん、なんでもない。これ、ありがとね」

じいっと私を見つめる視線。以前とは違う、くぐもった瞳。私の思い込みのせいなのか、冷たく聞こえてしまう言葉。それら全てから逃げるように、私はまた貼りつけたような笑顔を浮かべる。

あかりは、何も言わなかった。何も言わず、自分の席に戻った彼女の背中を見ながら、〝ああ、今日も言えなかった〟と自分の情けなさに小さく溜め息を吐いた。


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