きみのための星になりたい。
第6章 初めて知ったきみの過去
四人で行った花火大会の翌日からは、またいつもの日常が戻ってきた。
柊斗への恋を自覚してからは、緊張して全く話せなくなるのではと思っていたが、そうではなかったようだ。
というのも、柊斗と付き合いたいだとか、柊斗の特別になりたいだとか。今はそんなことは望んではいない。この距離感で、大切な柊斗との時間を何もなく過ごせていけたらそれでいいと、そう思っている。
だからなのか、柊斗と一緒にいても、以前と変わらない、穏やかで優しい時間を過ごせている。
……それでもやっぱり、ふとした時に柊斗を意識してしまって胸が波打つことはあるけれど、気付かれないように平静を装っているからきっとバレてはいないだろう。
私は柊斗の隣にいられるだけで、幸せなのだ。
そんな幸福な気持ちを感じながら、過ごすこと五日。夏季休暇中も塾は週二回きっちりとあり、高校から出された課題と並行して懸命に頑張っている。
今日も私は、ジリジリと肌を焦がす太陽の日差しを浴びながら塾を目指す。
……それにしても、あかりがいなければやっぱりとても寂しいなあ。
そう、いつもはあかりと待ち合わせて塾へ向かっているのだが、私は今、一人で塾へ向かっている。というのも、あかりはどうやら風邪を引いてしまったようだ。昨晩のうちに連絡がきて、高熱が出ているから明日は塾に行けそうにないということだった。
いつも私に明るく話しかけてくれる彼女がいないと、何となく寂しくて物足りない。
塾へ向かう道のりをとぼとぼと歩きながら、私はあかりがいてくれることの大切さを改めて痛感していた。
もう馴染みとなった塾のエントランスをくぐり、いつもの教室を目指す。
あまり大きな音を立てないように気をつけてドアを開き、中をくるりと見渡せば、もう柊斗は席に座り、問題集等を机の上に出している最中だった。けれど、私はすぐに違和感に気付く。……いつも柊斗の隣にいるはずの悠真くんの姿が、見えない。
「柊斗、もう来てたんだね。そういえば、今日悠真くんはどうしたの?」
「それがさ、悠真のやつ、今朝塾を欠席するって連絡がきて。熱はないらしいんだけど、身体がだるいとか寒気がするとかで、念のため」
自分の席に腰かけながら、柊斗に悠真くんのことを聞くと、そんな答えが返ってきた。