きみのための星になりたい。
こんな柊斗を目にするのは初めてで、私の身体も知らないうちに緊張しているのか、手に汗が滲む。心臓はドキドキと脈打っていて、これから知るであろう柊斗の過去について考えると少し怖くなった。
けれど私がこんなのじゃ、柊斗はきっと落ち着いて話せない。そう思った私は、どんなことを話されても柊斗の話を真剣に聞き、受け止めると覚悟を決めた。
「ちゃんと聞くよ。私はここにいるから、ゆっくりで大丈夫」
かつて、柊斗が私にしてくれたように。柊斗の心が僅かにでも軽くなるなら、私も柊斗に寄り添いたい。
その気持ちが表情に現れていたのか、私を見た柊斗は少しだけ安心したような顔を見せてくれた。
「俺、両親は離婚してるって花火大会の日、言ったよね。俺の両親が離婚したのは、俺が小学五年生に上がった春、十歳の時だったかな」
そして話し始めてくれた柊斗の過去は、私の想像を遥かに超えるほどつらく、苦しいものだった。
「離婚の理由は、母さんの不倫。母さんから直接聞いたわけじゃなくて、高校生になった時、母さんの兄弟から教えてもらったんだ。今思えば、それが悪夢の始まりだった」
昔の記憶を遡っているのか、そっとまぶたを伏せ、何かを考えるように眉間にしわを寄せる柊斗。
まさか柊斗の両親が離婚した理由が不倫だとは思ってもなく、少し動揺してしまった。
けれど柊斗は私をそんな私を見ても微動だにせず、「びっくりするよね。俺も正直驚いたから」と小さく笑う。
「ばあちゃんが言うには、母さんは昔から自由な人だったらしい。だから他に好きな人ができた母さんは、そっちへ向く気持ちを我慢できなかったんだと思う」
「……うん」
「不倫がバレて色んな人に攻められたとはいえ、父さんと別れられて、新しい恋人と付き合えて。母さんはきっと幸せな日々を送ってた。だって俺、ぼんやりだけど覚えてるんだ。母さんがやけに毎日嬉しそうだったこと。今思えば、あれは恋人の人がいたからなんだろうね」
淡々とそう話す柊斗をただじいっと見つめていた私は、ここである疑問を持つ。
……この事実を、柊斗はもう完全に受け入れられているのだろうか。
だって言い換えれば、お母さんの都合により、柊斗は父親を失ったことになるのだから。それに柊斗だけではない、日菜ちゃんもだ。
それを柊斗はどのように思っているのか疑問に思ったけれど、聞くことはできなかった。なぜなら、柊斗がまた意味深な台詞を口にしたから。