きみのための星になりたい。

「じゃあ蓮、お姉ちゃんと一緒に、まずは身体と髪の毛拭こっか?」
「ええ、僕、拭かなくてもいいよ?」
「うーん、でもね、ちゃんと拭かなきゃ、またコンコンが出てしんどくなっちゃうよ?」
「……じゃあ、お姉ちゃんが拭いてくれる?」

蓮の手を引いて脱衣所にきたあと、しゃがみ込んで、しっかりと目線を合わせて蓮と会話をする。蓮がくりくりの瞳を輝かせながら首を傾げるから、私は笑って縦に頷いた。

「じゃあ、わしゃわしゃするから後ろ向いてね。蓮はお利口さんだね。またコンコン出たらしんどいもんね」

蓮の頭にバスタオルを乗せた私は、そのままバスタオルを適当に動かし、蓮の髪の毛に溜まった水分を拭き取っていく。急がないと、蓮が風邪を引いてしまう。そう思い、私は忙しなく自分の両腕を動かした。

……そう、お母さんがさっき裸で濡れたままの蓮を見てお父さんを指摘したのも、風邪を引かせないため。

蓮は一歳を過ぎた頃から身体が弱く、喘息を発症してしまったのだ。

初めは、臨時で薬を使用すれば通院まではしなくてもいいような軽いものだったけれど、喘息発作の起きる回数は年々増えていってしまい、今では年に数回入院しなければいけないほど。通院しながら常時薬は使用しているが、それでも喘息発作が起きるときは御構いなしに襲ってくる。

蓮の喘息発作が起こる引き金は、埃などのハウスダストや、風邪を引くことなどによって免疫力が下がること。特に風邪を引いているときなどは発作が起きやすく、蓮が大抵入院するのは、風邪がこじれたことが原因の肺炎になったときや、なりかけのときだ。

そのこともあり、蓮の喘息が発症してからは、お母さんやお父さん、そして私は蓮のことを心配し、気にかけるようになった。

お母さんは以前勤めていた事務業を辞め、専業主婦となり、蓮の保育園の送り迎えはもちろん、保育園がないときは蓮の面倒を見たり、蓮の体調に気を配り家事などを行なっている。埃がたまらないように毎日掃除をしているから、家の中も常に綺麗だ。

お父さんも仕事が終わって帰宅すれば、すぐに蓮のもとへ行き、風邪を引いていないか、息がしづらいことはないか、と、蓮のことを心配している。

といっても、それは当たり前のことだと思うし、私も、いつも無邪気に『お姉ちゃんお姉ちゃん』と私のことを慕ってくれる、可愛い蓮のことがそれなりに心配だから。

けれど、蓮ばかりを見つめている両親を見ているのは、やっぱり少しだけ寂しい。

かといって、一番苦しんでいるのは紛れもなく蓮なのだから、私は姉としてできることを精一杯やるだけなんだけれど。
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