MIYU~シングルマザー二十歳,もう一度恋します~
「いえいえ,とんでもない!あたし,そんなつもりで言ったんじゃないですからっ!」
彼は本当にいい人みたいだ。美優は丁重(ていちょう)にお断りしたけれど,彼の気持ちはすごく嬉しかった。
二十歳にもなって,家族はともかく誕生日を祝ってくれようとしている人がいてくれるだけでありがたいことだ。
実は前日,二十歳になった記念に自腹(じばら)でシャンパンを買ってきて,一人でボトルを一本(から)にしたのだが。まだ彼と初対面の今日は,酒豪(しゅごう)っぷりがバレて引かれても困るので話すのはやめておくことにした。
「でも,いいんですか?あなたみたいな有名人が,こんな出会い系アプリで女性と……」
自分も利用しておいて,"こんな"呼ばわりも何だけれど。
「僕はそんなに有名人でもないよ。それに,アプリではニックネーム使ってるから。正体がバレることもあんまりないし」
「はあ」
問題はそこじゃない気がするが。
「僕は結婚歴ないから。恋愛を楽しむだけの分にはいいんじゃないかと思ってる。もちろん,そこから結婚に繋がる縁もあるかもしれないけどね」
美優はアイスラテを飲みながら,「あたしがその相手になれたらな……」なんて思っていた。
「でも,裕一さん。じゃあどうして,シングルマザーのあたしを選んだんですか?恋愛を楽しむだけの相手にしては重いでしょ?」
「えっ?重いって何が?」
どう言えば伝わるだろう?――美優はつっかえつっかえ,裕一に話した。
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