MIYU~シングルマザー二十歳,もう一度恋します~
「僕の部屋は二〇階だよ。さすがに1(ワン)フロアー貸し切りじゃないけど」
「えっ,賃貸なのココ?家賃結構かかるんじゃない?」
数多くベストセラーを出していても,さすがに超高層分譲(ぶんじょう)マンションには住めないか。
というか,リアクションが庶民的すぎて情けない美優だった。
「家賃は……月(ふた)ケタかな。でも,作家の収入だけじゃ生活やってけないから,講演やったりコメンテーターの仕事をやったり」
「はぁー……,大変なんだね」
有名人は有名人なりに……というか有名人だからこそ,生活水準(すいじゅん)を保つのもひと苦労なのだろう。
「うん,大変だね。でも結構楽しいよ。自分のやりたいことを仕事にするのも」
「へえ……」
"有名人の(つま)"なんて,自分に務まるのかな?美優はふと不安になった。
(でも,本気で好きならそんなこと気にならないよね。大丈夫)
務まるか務まらないかなんて,考えるのも野暮(ヤボ)だ。今は好きになったこの人との時間を目いっぱい楽しもう!
「――さ,上がって」
「おジャマしまーす……。わあ,広ーい☆」
エレベーターで二〇階に到着。彼の部屋は二〇〇四号室だ。間取りは2LDKだけれど,ひと部屋ひと部屋の広さがすごい。
寝室のベッドはダブルサイズ。二人で寝ても窮屈には感じない広さがある。
(いやいや,『二人で寝ても』って)
(みょう)生々(なまなま)しい妄想(もうそう)をして,美優は一人顔を赤らめた。でも今夜,それはただの妄想ではなくなるのだ。
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