MIYU~シングルマザー二十歳,もう一度恋します~
気を取り直し,彼女はとりあえずリビングのソファーに落ち着いた。ジャケットとバッグをソファーの上に投げ出し,浅めに腰を下ろす。
……やっぱり,少し緊張しているのかもしれない。何せ,恋人の部屋を訪れるのは四年ぶりのことなのだから。
もっとも,健の部屋はこんなにいい部屋ではなかったけれど。
「――それにしても,驚いたよ。酒強いってホントだったんだね」
ソファーに深く腰掛けた裕一が,まったく酔っていない美優の姿に舌を巻く。
「うん」
隣りに体重がかかったのを感じ,美優の緊張はさらに高まった。正面を向いたまま,相槌を打つだけでいっぱいいっぱいだ。
シャンパンをグラス一杯飲み干した後も,美優はイタリア産の赤ワインをハーフボトル一本空にした。それも,車の運転がある裕一は飲んではいけないため,彼女一人で,である。
「あたし,性格上ウソつけないの。ついたとしても,後で絶対罪悪感に(さいな)まれるから」
春奈(我が子)にだって,小さなウソ一つついただけで申し訳なくなる。美優はそういう正直人間なのだ。
けれど,そんな美優も裕一にまだはっきりと伝えていないことがあった。
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