過ぎた時間は違っても
両親や親戚に訊いても何か隠さなきゃいけないくらい感情が動くような過去があったわけでも無さそうだしな。そもそも、俺の家は隠し事が苦手な人の集まりと言って良いほど嘘が吐けない人が多い。そんな人たちが何か隠しているような素振りを見せていないんだ。大変な事件に巻き込まれていた訳では無いんだろう。でも、記憶を消したくなるほどの辛い事実って一体何なんだろう。

「おい、大丈夫か?」

「えっ?あぁ・・・」

何だ、今の。光の中に誰かがいたような。ダメだ、分からない。思い出せない。その人が関係しているのか?今、光の中に見えた人が俺のこの違和感を消してくれるのか?
そんな訳無いか。どこの誰かも分からなければ顔もよく見えなかったんだ。捜し出すだけ無駄だ。でも、無関係なら何で涙が止まらないんだ?
< 106 / 260 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop