過ぎた時間は違っても
完璧な姿勢で程よい力で綺麗な弧を描いてボールはリングに吸い込まれていくように入った。たぶん、その姿だけを見たのだとしたら彼女であると分からなかったと思う。でも、そこで長く練習していたのか帽子を脱いで汗を拭いた時に彼女の顔が見えてしまったんだ。
まるで翼が映えているような身のこなしをする彼女を見た時、俺はきっと一目惚れの片思いで終わるのだと思っていた。隣町だったし、名前も学校も知らなかったから。でも、違った。中学校の部活の大会で会う事が出来た。
会うと言っても急いでいた俺とぶつかってしまったのがたまたま彼女だっただけなんだけど、隣町の早朝にしか見た事がない彼女に会えるなんて奇跡だと思った。
父の本格的に学んだらどうだという言葉に甘えて、ここの高校に入ると入学式の日にまた彼女の姿を見る事が出来た。
もうこれは運命以外の何物でもないと思った。神様が俺に恋を叶えろと言っているのだと思ったんだ。
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