過ぎた時間は違っても
男は生徒に紛れて外へ出ていこうとしていた。でも、私は男を睨んでしまっていた。別に付きまとわれる事が嫌な訳じゃない。昔から人と違う見た目のせいで危険な目に遭ってきたし、兄が転入して来たのだって両親と離れて暮らす私の身を案じて引っ越してきてくれたから。

「待ってよ。話くらい良いでしょう?二人の部活が終わったらいつもの場所にいるから。・・・待ってるから」

男は何も言わなかったけれど、唇を軽く噛んでいた。二人で会うと言わない事が気に食わないのか、別の理由なのかは分からない。でも、私だって危ないと分かっているのに二人で会うほど単純に生きていない。
ただでさえ短い命なんだから、一秒でも長く生きたいと思っても良いでしょう?
私の病気は髪や肌が白くて目も赤いのに視力が弱い訳でも紫外線に弱い訳でもない。名前はあるのに治療法はない。心臓は、成人する頃には止まるらしい。何の予兆もなく、突然息絶えるらしい。
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