過ぎた時間は違っても
唯織はずっと俺を突き放す行動ばかり取っていたから驚いたんだと思う。体育館にいる生徒たちはきっと、唯織が自分の恋人になってほしいと言っているように捉えたんだ。その証拠に本当なのかと副部長が確認してきた。

「・・・伊野さんが、お前の事を・・・?」

「あ、違いますよ?しつこく言ってくるから付き合っているだけで俺、あの子の事を好きじゃないんです。それを話したら唯織が放っておくなんて弄ぶなって怒っちゃいまして」

固まった生徒たちは動き出し、体育館を包んだどよめきも無くなった。生徒たちは俺が悪いと笑いながらじゃれつくように責めてきたけれど、俺にも別れられない理由があったわけだし何で責められているんだろうと疑問を持たなかった訳じゃない。
唯織は容姿が良いだけじゃなく、モテる俺に惚れないという全男子生徒のアイドルだったから。
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