過ぎた時間は違っても
いつも以上に輝く彼女の瞳に失神しそうになりながら、俺たちはまた自転車を走らせた。いつか泊まりに来れば良いなんて話をしながら。
隣町に着くと、そこは思っていた以上に殺風景だった。瓦礫や道路など、人工的な物も植物も無い。砂とも泥とも言えない土のような物が砂浜へと続いているだけだった。

「ごめん・・・」

「何で?素敵な場所じゃない」

彼女は俺の謝罪に疑問を持っていた。謝る必要がどこにあるのかと。そして、またカメラを見せてきた。そこに写っていたのは殺風景な町じゃない。これが自然界なんだと、爪痕さえも美しく感じてしまうような風景が写っていた。
ズボンを捲り、靴と靴下を脱いだ彼女はそのまま海の方へと歩き出した。海に着くまでに何枚か写真を撮っていたみたいだけど、それを見せてはくれなかった。
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