過ぎた時間は違っても
俺に病気の事を話せたのはまだ友達になっていなかったからなんだろうな。まだあの時は一緒の高校に通う同級生くらいにしか思っていなかったから、ちょっと踏み入った心境でも話す事が出来たんだろう。でも、あの二人は違う。泊まりに来れるほど仲良くなってしまった。だから余計、話しにくいんだろうな。

「私ね、両親が病気のせいで悲しむ姿を見てから悲しまれるのが怖くなったの。本当に辛い時って何をどう伝えても聞く耳を持ってくれないでしょ?だから何も出来ない無力な自分が許せなくなったの」

「じゃあ、唯織に死期が近付いても悲しまないよう頑張るよ。頑張るからさ。唯織も病気の事なんか気にしないで、最高に良い人生だったって最後に言えるくらいに生きる事を楽しんでよ」

俺は初めて、唯織と明日以降の約束を交わした。
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