過ぎた時間は違っても
「唯織ちゃんには勝てないな・・・」

「翔琉先輩の事、好きなんだ?」

美幸さんは病室の椅子に座ったまま俯いていた。恋敵が友達だった時の絶望感って凄く大きいんだよな。友達だから、他の人よりどれほど良い人なのか知っているから。短所を許してしまうほどの長所を知っているから。
俺の質問に頷く美幸さんの肩に力はなかった。泣いているのか、少しだけ体も震えている。唯織であったなら抱き締めてでも励ましたんだろうけど、相手が美幸さんだった事もあってハンカチくらいしか差し出せなかった。
俺に感謝したかと思うと、美幸さんはどれほど自分が卑怯な人間なのかを語り始めた。唯織は持病があって、普通に生きていても自分たちより早くに亡くなる。なのにこのまま見つからず、帰ってこなければと考えてしまっている自分がいると。
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