過ぎた時間は違っても
この世界にいても唯織は成人する前に亡くなってしまうんだ。どうせ唯織がいないのなら、元の世界に帰りたい。唯織と一緒に過ごした思い出も悲しみも、俺の勇気の源として生きていきたい。

「ただ・・・、現実がいつも良いとは限らないんじゃないか?・・・その、元の世界ではもう唯織は亡くなっているんだろう?」

「この世界にいても、唯織は成人になれずに生涯を終えます。・・・唯織の病気を治せないなら、俺は元の世界に戻りたいです」

強気に出れる立場ではないのかもしれない。この世界の翔琉先輩は唯織の兄なのだから、家族が家族の心配をするのに無理はない。だって元の世界に戻れば唯織はいなくなってしまう。妹を亡くなっている世界に戻すなんて事、愛していればしたくないと思うのも無理はない。
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