過ぎた時間は違っても
もう一本ある道には翔琉と知らない人たちがそれなりにいた。私のいる道には羽李と私の二人だけ。でも、見えない壁があって前に進むしか出来ないこの状況に逆らわないよう、翔琉には辿り着いた先で待っていると叫んだ。
翔琉は大きく頷いて腕で大きな丸を作ると前に走り出した。私たちも前に進もうと互いの手を握ったまま歩き出した。
何だろう。この空間に凄く覚えがある。歩いていないで走りたい。早く道の先に行きたい。焦る気持ちを抑え切れず、走り出した私を後ろから追い掛けてくる羽李。何か叫んでいるけれど聞く耳を持っていなかった。
折角伸ばしていた髪が短くなっていった事にも身長が伸びて伊野家だった頃の見た目に戻った事にも気付かずに走っていた。どうしてこんなに引かれるのかも分からないまま道の先に着くと、真っ白な部屋がおかえりと言ってくれた気がした。
ようやく、全部思い出したんだ。
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