過ぎた時間は違っても

羽季の母親と叔母がこの町に引っ越してくる前、羽季の叔母は明穂の父親が既婚者だと知って身を引いた。しかし、明穂の父と羽季の叔母の間に子供がいるという有らぬ噂を耳にした明穂の父が焦って羽季の叔母を捜していた時に妊娠している羽季の母親を見つけた。
姉妹というだけあって顔の雰囲気も似ていた妊娠している羽季の母親と羽季の叔母を見間違え、胎児の命だけを奪えればと思って車を走らせた。本人は脅すだけのつもりだったのかもしれない。でも、当たり処が悪くて羽季が助かり母親が亡くなった。
羽季の父親が明穂の母親とそんな話をしていたのを羽季と一緒に入った、私の両親が経営する喫茶店で聞いてしまった。明穂は母親に似ていたからすぐに親子だと分かったけれど、その人の子供というだけで明穂を恨むのはどうかしていると感じて放っておいていた。羽季の事で気が引けるならただの同級生以上にならなければ良いと特に気にしなかった。