過ぎた時間は違っても
どうしても詫びたいと言いたげな表情をしていたのに、俺の申し出を聞いた途端に笑顔が戻った。単純な人だなって思わなかった訳じゃない。寧ろ、単純な人だなと声に出して笑ってしまった。でも、バカにしたり呆れたりした訳じゃない。変に気を使ってぎこちなくなってほしくなかったから嬉しかったんだ。
高校にいる人たちは俺の父親が理事長の秘書である事を知っている。だからほとんどの人が俺個人に興味がない。理事長の秘書の息子という俺に興味があるんだ。だから高校の生徒や教師みたいに色眼鏡で俺を見ない部長を失うのは少し惜しい気がしている。部長が俺から離れて行ったら、俺には唯織しかいなくなってしまうから。

「伊野さんに失礼な態度を取ってしまったな・・・」

「特に気にしてないと思いますよー?」
< 32 / 260 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop