過ぎた時間は違っても
大丈夫と言った所で羽季の表情が変わる事はなかった。私の中にある、転入生の名前を思い出せていないというもやもやが羽季にも伝わってしまっているのだろう。握ってしまった手を離そうとしても、もっと強く握られるだけだった。
羽季にも同じ癖があるから仕方ない事なのかもしれないけれど、絶対悪化させているよね。こういうつもりで一度デートしろと言った訳じゃないんだけどな。

「俺には嘘吐かないで。やっぱり帰ろう」

「嘘じゃないって。先輩の名前が思い出せなくて。すみません」

「いや・・・、俺、あの日家着いてから名乗っていない事に気付いて・・・。その・・・。来栖(くるす)です。よろしくな、伊野さん」
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