過ぎた時間は違っても
自分の死をこんなにも悲しんでくれる人がいるんだって、私を大切に思ってくれている人がこれだけいるんだって。思っちゃいけないんだろうけど、悲しんでくれている姿を見て喜んでしまっているんだ。だから、喜びの方が大きくて悲しまずにいられている。皆が悲しんでくれているから、自分の死を悲しめないんだ。でも、羽季には少し分からないかな。
自分のために叱ってくれたり悲しんだりしてくれる事がどれほど嬉しい事なのか、ちゃんと気付ける大人になってくれるのかな。無理な気がするけど、私がいなくなる事で変わってくれるのなら嬉しいかな。
心配する必要もないか。心から謝罪しているんだって私を後ろから抱き締めている腕を伝って来るんだもの。この気持ちを知ってくれるかどうかは別として、優しい大人にはなってくれそうかな。だってまだ怖くて震えているのに私を不安にさせないように落ち着こうとしてくれているんだもの。
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