過ぎた時間は違っても
警察病院へ向かう車の中で父は唯織がどこにいたのか話してくれた。唯織は昨日の登校中、慶太郎おじさんと唯織の父親の父親に話し掛けられたらしい。人違いだと逃げようとすると口と鼻を塞がれ意識を失わせたんだとか。父が帰ってくるのが遅くなったのは犯人を捕まえるために警察を呼んで事情聴取を受けていたからだったとか。

「体は大丈夫なのかよ?」

「自分の目で確認しろ」

唯織が発見されたのはボロいアパートの畳の下だったらしい。小柄な女性が一人入れる程度の小さな穴に無理やり閉じ込められていたそうだ。
病院に着くと、特に目立った外相のない唯織がベッドの上で眠っていた。でも、唯織の姿を見て父が何か言いたい事を渋っているような口振りだった理由が分かってしまった。
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