過ぎた時間は違っても
一日姿を見なかっただけなのに、髪の色が茶色から白ともクリーム色とも言い難い色に変わっていたんだ。もうすぐ、唯織は死ぬ。半年なんて持たないくらい早く、唯織は動かなくなって心臓も止まってしまうんだ。

「嘘・・・、唯織・・・?唯織!なぁ!起きてくれよ!唯織!!」

どれだけ大きな声を出しても目を開けてはくれなかった。いつもならうるさいって怒ってくれるのに、二本の指で軽く額を叩いて黙らせてくれるのに。幼い子供が母親の腕の中で眠るように安心しきった無防備な寝顔をしていた。いつものように手を握っても握り返してはくれなかった。ぴくりと指先を動かしてくれるだけでも良いのに、反応してくれなかった。
唯織の両親は互いを支えるようにやっと立っていられる状態、慶太郎おじさんは自分の不甲斐なさを恨んでいるのか壁を殴っていた。
< 85 / 260 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop