過ぎた時間は違っても
誰かが望んだんだとしたら俺は絶対に許さない。俺の手でそいつのいない世界を作ってやる。

「羽季、少し休め」

「大丈夫」

唯織の手を握ったまま、寝てしまっていた俺にちゃんと休むよう父は言うけれど俺はごめんだ。何で実の親である二人は唯織の手を握ろうとしないんだ。何で触れようとしないんだ。何で父も慶太郎おじさんも冷静に仕事なんて行けるんだよ。
唯織の事はどうだって良いって言うのか。起きないから、動かないから。ただそれだけの理由で放っておくって言うのかよ。
いや、違うか。触れるのが怖いのか。もし自分が触れた時に冷たかったらどうしようとか、自分が触れた瞬間心臓の止まる音が鳴ったらどうしようとか。こんな大切な時に余計な事を考えてしまうのか。
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