あなたに捧ぐ潮風のうた


 孝子は父を真っ直ぐに見つめて頷く。

 孝子は、父から期待を掛けられたこと、上西門院の女房になれるということが純粋に嬉しかった。

 恵まれた暮らしには対価がつきまとう。何もせずにただ裕福な暮らしを享受できるわけではない。

 このように高い身分に生まれたのは、それだけの果たすべき義務と使命があるのだ。

 貴族の娘として、孝子はそれを理解していたし、幼い頃から教えられていた。夢見るばかりではいられない。

(よい縁談を見つけることね)

 女院の元にやってくる貴族らはきっと多いだろう。彼らの中から孝子は相手を見つけ、父親の期待に応えなければならない。

 結局、孝子は天命に身を任せるしかないのである。

 風に吹かれて舞う落ち葉と一体何が違うのか、と孝子は一抹の寂しさを感じながら微笑んだ。



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