あなたに捧ぐ潮風のうた
白河殿──その人は今は亡き前摂政・近衛基実の正妻であり、平清盛の実の娘盛子である。
高倉天皇の准母であった盛子は、夫の死後、摂関家の荘園や家領を一手に相続した。
つまり、彼女は夫に代わり、事実上摂関家の頂点に立っていたのである。
ただし、これは家領荘園を受け継ぐ息子が成長するまでの一時的措置であり、後白河法皇もそれを認めていた。
だが、表に出なかっただけで、彼女の所有する家領荘園を羨み妬む者はいた。
彼女の死は、荘園の相続の問題を引き起こした。
盛子が死去した当時、清盛は厳島参詣をしていたが、悲しみつつも冷静さを保って迅速に遺領相続の指示を出した。