あなたに捧ぐ潮風のうた


 それは、かつて平家が武家として嘲られ、蔑ろにされてきた過去があるからである。

 清盛は、後白河法皇に対して表向きは恭順の意を示しているが、基房の願いを聞き入れた彼に、決して心中穏やかでなかっただろう。娘を蔑ろにされているのだ。

 だが、清盛の怒りの矛先が向いたのは、後白河法皇よりも藤原基房であった。

 平家一門にとって、悪事を企む基房は目障り以外の何ものでもないが、表向きは後白河法皇が盛子の遺領を押収したことになっている。

 そのため、藤原基房に直接怒りをぶつけることは叶わない。

 なぜなら、それは後白河法皇の意に背くことになるからだ。

 そのような状況が、清盛の苛立ちをさらに増長させていた。

 後白河法皇と基房、そして清盛の関係は、悪化の一途を辿っていた。

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