あなたに捧ぐ潮風のうた


 重盛はいつものように優しい笑みを浮かべた。

「いや、お前が呼びやすいよう、好きなように呼べばよい」

 穏やかに微笑む従兄は病魔に冒されているのが手に取るように分かるため、とても痛々しく、通盛はやり切れなさに唇を噛んだ。

 この従兄は齢四十ほどで、通盛は越前守の任を通じて国主である彼とは親交があり、可愛がられていた。

 重盛は人柄も良く、父にも劣らぬ政と軍の才もあり、当然ながら通盛は彼に憧れていた。

 だが、一方で不満もあった。

 良くも悪くも物分かりが良く、常に周りに配慮して自分のことは二の次。

 彼がここまで衰弱することになった優しすぎる性格が恨めしくもある。

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