あなたに捧ぐ潮風のうた


「父上様のご期待に添えるように努力いたします」

「お前のために取り揃えたものだ。これらを持って、しっかりと上西門院様にお仕え申し上げよ」

 そんな父の言葉に、孝子は「はい」と言って心からの笑みを浮かべる。

 確かに、この道具は役目の為に与えられたもの。

 だが、高価なものを与えられた喜びよりも、父が僅かでも自分を想って道具を選んでくれたことの喜びの方が遥かに勝っている。

 部屋に運び込まれた十二単の美しさに目を奪われながら、孝子はまだ見ぬ上西門院に仕える日を想像してみたり、年相応に新たな出会いに胸をときめかせたりしていた。

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