あなたに捧ぐ潮風のうた


 平家一門の男には見目麗しい者が多い。

 文に秀でており、その上、最も兵力を所有する一門でもあり、最も時流に乗り栄えている一門と言って良い。

 若くして出世、躍進する一門の子息に夢を抱き、姫君たちが熱狂する訳も頷ける。

 彼らは地位や権力、財力、容姿──天から二物も三物も与えられた者たちだった。

 現在、その平家一門において最も姫君の耳目を集めているのは、亡き重盛の息子維盛である。

 彼のその女性とも紛う美しい容姿は、教養ある女性ならば誰もが知るところである『源氏物語』の光源氏と評される。

 小宰相は彼の姿を目にしたことがあるのだが、確かに光源氏の名を冠するに相応しい姿をしていた。

 ひとたび青海波を舞ってみせれぼ、その雅やかな姿の噂は一日を置かずして都中を駆け巡ることだろう。
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