あなたに捧ぐ潮風のうた
彼女の言う「桜梅少将」とは維盛のこと。
確かに、月のように儚いと噂の彼には似合いの名である。
またある者は紅葉。また別の者は牡丹。
藤、梅、白つつじ、白菊、蓮華、菖蒲──。
それぞれ、喩えられた草花をその人と重ね、愛でるのである。
「小宰相様はどのお方がお好きなのでしょうか。今までそういったお話をされているのをお聞きしたことがありませんが…」
「さあ……わたくしにとっては平家の御方々は遠い存在でいらっしゃいますので……」
小宰相は小さく微笑んだ。
ちらりと上西門院の目がこちらに向けられた気がしたが、小宰相は主のそれに気づかぬ振りをした。