あなたに捧ぐ潮風のうた

「そうなのですね。例えば、宗盛様は白菊、知盛(とももり)様は紅葉、重衡様は牡丹、資盛(すけもり)様は藤……」

 よく覚えているもので、その女房は途端に話し出す。

 女房の話を聞いていた小宰相は、苦い笑みを浮かべた。

 平家の若君。彼らを遠くから眺めるだけで、何故、ここまで熱くなれるのだろうか。

 平家の者たちは、既に公卿の娘との良縁に恵まれ、正室や側室を娶っている者たちばかりだ。

(重盛様がお亡くなりになったばかりだと言うのに、このような話……)

 平家と言えば、重盛の逝去よりまだ幾ばくも経ってはいない。

 今はそのような話はなるべく慎むべきではないのかと小宰相は目を伏せた。

< 125 / 265 >

この作品をシェア

pagetop