あなたに捧ぐ潮風のうた
盛子の所領没収の件もそうだが、これまでに平家に対する反乱は何度か起きている。
その度ごとに、清盛は反乱を起こした貴族たちの官職を処分しているが、その反乱には後白河法皇が与しているという噂がある。
両者の関係改善に尽力していた重盛を嘲笑うように、清盛を挑発する後白河法皇。
そこには重盛の死に対する嘆きの色は見えない。
重盛の逝去と平家との勢力闘争とはまったくの別問題であるという主張であろうか。
暫くして落ち着きを取り戻した上西門院は、ふうと溜め息を吐き、心配そうに見つめる目を見返して小さく微笑んだ。
「──わらわが一人嘆いても致し方ない。きっと、法皇様には法皇様のお考えがあるのだろう。その不義の訳をお聞きしよう」
主人の言葉に一つ頷いた小宰相は、その主人の顔に隠しきれない動揺と懐疑の念を見た。