あなたに捧ぐ潮風のうた

 こうも手紙を送り続ければ噂にもなるだろう。

 彼女には諦めが悪い奴だと思われているに違いないが、関係のない人間たちの話の種にされているというのは気分が良いものではなかった。

 恋の噂に鈍感な教経すら知っているとすれば、もっと多くの人の耳に入っているかもしれないと思い、通盛は羞恥が込み上げてきた。

 同時に、通盛が諦められないばかりに同じく世間の噂の的にされている小宰相にも申し訳ない気持ちになった。

「残念だったな、教経。何も面白く無い話だよ。彼女には全く相手にされていないのだから」

「兄上、そう怒らないでください」

 呆れたように弟から諌められ、通盛は無表情で「別に私は怒っていない」と小さく呟いた。

 それからしばらくむっと押し黙った通盛に、教経は小さな声で「すみません」と謝罪した。

(怒っていないと言っているのに何故謝るのか)

 通盛は一つ思いため息をついてそっと目を瞑った。

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