あなたに捧ぐ潮風のうた
そして、瞼を閉じれば直ぐに思い浮かぶ、恋しいひとに思いを馳せた。
──花見会で見た彼女は、誰よりも気高く優雅に見えた。人を惑わすくらいに美しく可憐なのに、誰も寄せ付けない棘のような物もある。けれどまだまだ咲いたばかりのとてもかわいらしい人。
──今、彼女は何をして誰を思っているのだろうか。彼女の心の隅にでも私がいれば、こんな幸せなことはないだろうに……。
物思いにふけりながら除目の知らせを待つ夜は、長く続きそうであった。