あなたに捧ぐ潮風のうた
通盛、教経のみならず、話が聞こえていた家人たちにも動揺が広がる。
関白様が平家の越前国が取り上げられたようだ。
一体どういうおつもりなんだ。
重盛様はお亡くなりになったばかりだというこに。
清盛入道様のお耳に入ろうものなら……。
ああ恐ろしや恐ろしや。
そのような疑念と不安の声が広まる。
通盛は口惜しさに唇を噛んだ。
(重盛様が亡くなられたばかりであるというのに、あまりにあからさまに平家を挑発するではないか……)
重盛は国主として越前国を大切にして気にかけていた。亡くなる前にも通盛に越前国の様子を尋ねていたほどだ。
決定した除目に文句を言っても仕方ないとはいえ、あまりにもやりきれない。重盛が報われない。
通盛は歯噛みして拳を握りしめた。